1990年冬、どうしてもオオクワガタが採りたくて、時間を作っては、会社の友人の山崎氏と山梨へ材採集に通っていた。
まだ、成虫はおろか幼虫すら採集したことがなく、いつオオクワガタが採れるかドキドキしながら朽ち木と格闘していた。
材の割り出しで採集できるクワガタは、ほとんどが幼虫で、たまにコクワガタ、スジクワガタ、ノコギリクワガタの成虫が採れるくらいだった。
中でもコクワガタが一番多く、当時はオオクワガタが採れなくとも他のクワガタの成虫が出るだけで、嬉しかった。
2月の日曜日、その日も朝から山崎氏と2人で山梨に材採集に行った。夕方まで頑張ったが、その日はコクワガタとノコギリクワガタの幼虫だけで、オオクワガタはおろか普通種のクワガタの成虫も見ることができなかった。
ところが、日も暮れかかり本日の採集も終了というところで、武川村の畑の角にカワラ茸の生えた桜の切り株を発見した。ナタを入れてみると、いきなりコクワガタの♂と♀の成虫が、蛹室から顔を覗かしていた。さらに削っていくと、コクワガタの成虫ばかり、ボロボロ出てきた。薄暗い中、コクワガタの成虫を10頭以上採集した。気が付くと辺りは真っ暗になっていた。まだ半分も立ち枯れを削ってないのに…。
そこでその立ち枯れを揺すると、土中の部分の根が折れ立ち枯れは畑の上に転がった。
まだこの立ち枯れにはクワガタが入っているのがわかっていたので、そのまま立ち枯れを車に載せ持ち帰った。
1週間後の日曜日、持ち帰った立ち枯れを見ると、庭に転がしておいたので、蟻が沢山、木についていた。これはまずいと思い、すぐに木を割ることにした。
前に削ったところからナタを入れていくと、すぐにコクワガタの成虫、幼虫がでてきた。この直径30センチ高さ40センチの立ち枯れの中心部まで削っていくと、幼虫が食べる木の部分がないくらい食跡だらけで、そこに幼虫が蜂の巣のように入っていた。たしか幼虫が30頭くらいでたと記憶しています。
最後に朽ち木の樹皮のついた反対側を斧で割った。
すると、3センチ位のクワガタの♀が飛び出してきた。大きいコクワの♀だなと手にとってみると、羽にスジが入っていた。今まで見たことがないクワガタだなと思うのと同時に、これは絶対オオクワガタだなと思った。
(当時は今ほどオオクワガタの♀の写真がカラーで載っている文献など少なく、自分はオオクワガタの♀がどんな形をしているのかよくわからなかった。)
そのクワガタはピカピカいて、一見ヒラタの♀にも似たかんじだが、鞘羽のスジが気品があり、自宅の庭で手に乗せたまま、しばらく眺めていた。
山で見つけたのではなく、自宅の庭で初めて見つけたオオクワガタだが、これぞ自然の宝物だなと思い、オオクワガタを握りしめながら、喜びを噛み締めたことを今でも鮮明に覚えています。
山梨県 北巨摩郡 武川村
1991年2月17日
オオクワガタ ♀ 31ミリ
粕谷伸孝初採集
この時、デジカメがあったらな〜ぁ。